2016/10/24

MATTHEW HERBERT - 初期作品復刻-


MATTHEW HERBERTの功績が新しい世代に見直されています。

MATTHEW HERBERTといえば、ディスコ・ファンク・ソウル・ジャズなど、過去の作品から引用しアップデートさせる事が主流だったサンプリング・コラージュのシーンにて、自分の身近で聞こえる生活音を採取しパーツの一部として使用する手法を確立させた、パイオニアの一人。2000年には自身が決めたマニフェストPMCM(Personal Manifesto for the Composition of Music)にて、他者の作品からのサンプリング、アコースティック楽器サウンドの模写しないことを宣言する等、厳格な基準を自ら作り、そのサウンドを進化させてきました。

また、反グローバリゼーションの視点から、作品を通じて問題点を提起してきた事でも知られ、メジャーなポップミュージックのCDを叩き割る音、一頭の豚の誕生から食肉として食べられるまでの音、100枚のクレジットカードを切り刻む音、排泄から自慰行為まで人間が生活する上で生み出す音などを、サンプリングしリコンポジションするなど、常に、革新的に音楽を表現してきた無類のアーティストです。JEFF MILLS同様にエレクトロニック・ミュージックをアートの領域に持ち込んだプロデューサーの一人だと言えるかもしれません。




そのMATTHEW HERBERTの名が世に知れ渡ったのは通称「Partシリーズ」と呼ばれた1995年にスタートした12インチシリーズ。自身が主宰する[Phono]レーベルから発表されたこの作品群は、今では見かけることが多くなりましたが、当時は殆ど無かった、ブラウンの再生紙スリーブに、必要最低限の情報だけが記載されたラベル面というスタイルでリリースされました。

当時のテクノの主流はハード・アシッド・テクノ〜シカゴ・リバイバルが始まった辺り。ハウスの主流は”Body & Soul”に代表されるガラージ・ハウスとJUNIOR VASQUEZの”Sound Factory”でプレイされるようなハード・ハウスに二極化が始まった時期。そのどちらの文脈からでもないハウスを提示したのが「Partシリーズ」でした。

最小限の音数と展開で、ヒプノティックでありながらもなエモーションを内包した、そのオリジナル・スタイルのサウンドは、当時、他には無く、現在、ミニマル・ハウス・シーンのパイオニア・レーベルとしてリスペクトを集めている[Perlon]や[Playhouse]等へ大きな影響を与えたことは言うまでもありません。

シカゴ・ハウス / デトロイト・テクノをスタートと基準したダンスミュージックの周期が完全に一周し、新たなアップデートを模索している2016年、90年代のHERBERTの作品が再評価され、初期の名作群が次々と再発され始めてました。今回再発されたのは『Part One』(95年)収録の「See You On Monday」と『Part Two』(96年)収録の「Deeper」の2作品。

BASIC SOUL UNITやLINKWOODといった00年代以降に頭角を現した、おそらくHERBERT世代であろう実力派アーティスト達がアップデートしたリミックスも収録されていますが、やはり今、聴くべきはオリジナルではないでしょうか。エレクトロニック・ミュージック・シーンを振り返る上でも重要な作品です、是非、ご一聴ください!


HERBERT / See You On Monday
http://www.undergroundgallery.jp/index.php?main_page=product_info&products_id=48802


HERBERT / Deeper
http://www.undergroundgallery.jp/index.php?main_page=product_info&products_id=48927