2010/11/06

読書週間:11日目

本日は、長編小説のご紹介。

第二次大戦下のスペインで暗躍するスパイを描いた物語です。

戦況がますます激化する当時のヨーロッパ。中立国スペインでは、
ドイツ、イタリア、日本の枢軸側と、イギリス、アメリカを中心とする連合国側
が入り乱れ、敵の情報を得ようと躍起になっていた。



「燃える蜃気楼」 逢坂 剛 著(講談社)

日本の小説で、第二次世界大戦について書かれた作品は多いけれど、
ヨーロッパを舞台にしたものには出会った事がなく、
銃を持たず、祖国のために諜報員という形で戦い続けた日本人が登場し、
007のような、スーパーヒーローは出てこない、というところに興味をそそられ読んでみました。

作者自身、スパイだった人物への取材もしたそうで、史実への執念が、フィクションをリアルに
力強くしている感じです。
いまなお行動が謎とされている実在の人物達のいた時代。
どの情報が正確なのか・・・この1点にかけて、各国のスパイが、ときに敵と接触しながら裏の裏を
探り合う。
ハイテク技術を駆使する今とは違い、人間同士の接触による情報収集が、いちばん活発だった時代。
二転三転する心理戦は頭を休める暇を与えてくれませんが、非常さ、狡さ、弱さ、不可解さといった
人間臭さがなんともいいです。

シリーズものの第3弾ですが、前作を読んでなくても十分楽しめます。
が、前後が気になる覚悟をもって手にとってほしいかなと。

秋の夜長、時間つくって気長に世界に入ってみてください。

Yuu